こんにちは。ゆめピアノ教室のいしごうおかです。
小5の男子生徒さんのお話。
ご両親の仕事の関係で、サマーコンサートは参加しません。
「息子は右腕を骨折してピアノが弾けなくなりました。これからのレッスンについて次回相談させて下さい。」
うわぁ~、何週間?ひょっとして何か月???たいへん~。
お休みする、って言うのかなぁ?
私のアタマに閃いたのは、「<幻想即興曲>の左手をやったら?」ってこと。
それでレッスン日になってそうお話すると、「いや、家でも左手を練習するいい機会を与えられたのかな、って話していたんです。」と言われる。
まぁ、なんて前向きで素敵な発想なんでしょう。
アフタータッチの話で彼の関心を引き、
「コンマ何秒の世界だけどゆっくり打鍵するとこんな音、速く下ろせばfの音だよね、わかる?」・・・いつになく素直~に聞いている生徒。
とてもていねいに発音に集中して、スッゴイじゃん?!
「そう、左手のワルツ・バスの和音はこんなくらいの音で十分。」と、こんどはガチャガチャとふつう~の神経で弾いた左手に右メロディをつけて弾いて聴かせる。
「どう?せっかくのメロディを壊しちゃうよね。」
そのあと「幻想即興曲」を弾いてあげると、「え、この曲を僕がやるの?」って心なしか顔赤らめて、かわいぃ~(^^♪
「このなかの左手ってこんな感じよ。ふつうに強く弾いてしまうと<幻想>って感じする~?」
「いや、ショパンの即興曲は4曲あって、<幻想>ってタイトルがついてるのはこの曲だけ。あ、でもこれはショパンがつけた訳じゃないんだよね。
それでフォンタナ版のほうが有名になっちゃってるんだけど、そういえば最初の左手のところの音がすでに違う。フォンタナ版はこう、・・・で原典版はこう。どっちが簡単?」
「フォンタナ版。」「そうなんだよね、でもショパンが書いたほうとどっちがいい?・・・だよね、簡単だからって書き換えちゃうなんて怪しからん。だから原典版でぜひやろうね。」
「こんな左手の音だと、カクカクはっきり現実の音?になっちゃうよね~。
レガートで、さっきのワルツバスみたいに繊細なタッチで弾かなきゃね。これから練習していこうね。」って。
この音バランスの比に、もう彼はダンボの耳!・・・
全体のなかでの、左手の音の美しさに触れた彼。
こうしたことへの気づきは、ありきたりの生活での尋常な神経ではなかなか難しい。
けがの功名になりますように。